2003年 
 とうとう読書日記を始めてしまった。
 とうとう、というのは、これを始めるとえらいことになる、ということが分かっているから。
 でも、読んで心に残ったり考えさせられたりしたものは書き留めておきたい、という誘惑には逆らえない。
 いつ役立つか分からないし。
 とりあえず、始めることにします。読んだもの全部は載せないと思うし、気まぐれですけど。

 まず、2002年に印象に残った本を少し。

 べストワン 梅原猛 「梅原猛の授業 仏教」(朝日新聞社)
         梅原猛・上田正昭 「日本という国」(大和書房)


 どちらも日本人必読。「仏教」はベストセラーになりましたが、
 これほど日本の仏教の発展を体系的にやさしく解き明かした書物は画期的。
 また高校での授業という形なのでよけいわかりやすい。
 高校生との討論もあり。高校生も真剣に色々考えているのだから(当たり前ですね)、
 それを引き出せないのは教える側の責任でしょう。
 
 「日本という国」は目からうろこの本。とくに明治以降のいわゆる国家神道が、本来の神道とは違い、
 天皇教という一神教を無理して作ったもので、本来の神道は多神教であり寛容なものという指摘にはとてもうなずけた。
 だから廃仏毀釈なんてやったということ。本来日本は神仏習合で、その寛容さが日本のいいところという。
 これからの世界を平和にするために、多神教的な知恵が必要ということで、未来にも開かれた本。
 
 上田正昭氏は著名な歴史学者だが、なんと神官の家の出身だという。
 その上田氏も、国家神道は本来の神道とは違うというのですから。
 これを読んで、いわゆる昨今のナショナリストが攻撃的というか、非寛容というか、
 そんな感じを受ける理由が少し分かった気がする。

 小泉首相がこだわる靖国参拝だが、梅原氏は本来日本の神道は敗者をまつって和を作っていたのだから、
 こちら側だけまつって相手をまつらない靖国神社は伝統的な神道を逸脱していると言っている。これも納得した。
 靖国神社は国の考え出したとてもうまいシステム。それは国家神道だからできたこと。
 靖国問題は国内問題だから、日本人がちゃんと向き合わないと解決しない。
 個人的に参拝するのは自由だと思うけれど、公のものにしていくことは危険。
 グローバリズムの時代に、国家神道に戻るのは日本の将来にとっていいとは思えない。
 内面まで規制する危険もあるし。今案の出ている、無宗教による追悼施設の方がまだ筋が通ると思うのだが。

 ベストスリー 姜尚中・森巣博 「ナショナリズムの克服」(集英社新書)
 
 とにかく痛快。
 朝日新聞の論壇で、「(中国人のDNAが劣っていると発言した)石原慎太郎氏に
 なぜマスコミは極右のレッテルを貼らないのか」と言った森巣氏にはまったく共感したが
 (石原氏に対する一部マスコミの持ち上げ方は、ファシズムかと思うほど)、これくらいになれば「無境界」も本物、
 うらやましくもある。これが5万部売れているのは救いですね。

 その他人文関係

 
 大塚英志編 「私たちが書く憲法前文」(角川書店) 「中央公論」の連載をまとめた。
 17歳の高校生のいきいきした、生活編的「憲法前文」など。みんなで書いてみると面白い。
 高校の社会科の先生で、これを課題にした先生がいるそうな。いい先生だと思うよ。

 余談だが、中央公論は今中央公論新社で、つまり読売の傘下で、
 この連載に投稿した読者で平和憲法支持者が多かったので、読売の会長のナベツネどのがキレて
 中央公論新社から出ずに、角川になったという話だが・・・?  
 岸田秀・金両基 「日韓いがみあいの精神分析」(中公文庫) 

 在日2世という立場でバランスあり、
 博識の金氏と、精神分析を歴史、国という集団に当てはめて思いがけない結論を引き出す岸田氏。面白い。

 香川リカ 「ぷちナショナリズム症候群」 (中公新書) 

 現在の流れをうまくすくっている。
 「わかりやすい」ことの危険性を再認識。 
 音楽の本 ベストワン
  
 ペンティヴォリオ編・白崎訳 「わたしのヴェルディ」(音楽の友社)

 歌手や指揮者、演出家が、めいめい自分の好きなヴェルディ・オペラの魅力を語る。
 発見の連続。文句なしに面白い。とくに「ファルスタッフ」を語る指揮者ムーティのいきいきした口調。
 「コシ・ファン・トウッテ」とならんで、無人島に持っていきたいオペラだそうです。
 「私たちの人生そのものっていう作品」なんだそう。

 あと、チョン・ミュンフンが語る「ドン・カルロ」。「これくらい人間を完璧に描き出したオペラはない」
 「ほんのわずかな音符だけで、ヴェルディは人間存在の根源的なところに達している」。大同感!!!

 そのほか、小説で印象に残ったのは、
 島田雅彦「フランシスコ・X」
 高村薫 「晴子情歌」、
 柳美里「ゴールドラッシュ」
(「命」シリーズも悪くないけど、こっちの方が「才能」を感じさせる)、
 江国香織「神様のボート」(不覚にも?泣いた)、
 川上弘美「センセイの鞄」(何度も読みたいとは思わないが、独特の世界であることはたしか)などなど。
仕事部屋。もっと本棚がほしい!