2006年1月 番外編!ボローニャ
       

1月13日、15日 ボローニャ歌劇場「アンドレア・シェニエ」(ボローニャ市立歌劇場)

やってきました名高いボローニャ歌劇場。今年の6月には来日予定、
その演目のひとつである「アンドレア・シェニエ」の現地での初日を聴きにきた。
プロダクション自体は2004年のもので、新制作ではないが、今回は来日キャストでの上演とのこと。
ちなみにプレミエの時は、主役はデッシー、アルミリアートだったそう。それもいいな。

今回は、タイトルロールは日本でも人気の高いホセ・クーラ(イタリアではすごい人気だそう)、
ヒロインはマリア・グレギーナ、悪役ジェラールはカルロ・グエルフィ(安定したうまい歌手、好きです)。
ゲネプロ(13日)と本番の初日を見たが、ゲネプロはグエルフィは調子が悪いとのことで、
Bキャストの韓国人歌手コ・セン・フン。彼もなかなかよかった。迫力でした。声も太いし、ドラマティックな役に向いている。

で、初日の感想。
いやなかなかよかった。「歌手のオペラ」である「アンドレア・シェニエ」を堪能させてもらった。
まずホセ・クーラが調子がよかったのが大きい。
私はクーラは、「いいときと悪い時の差が激しい」といわれるけれど、あまりいい時に当たらないな、と思っていたのだが、
今回は素直によかった。素質はすごくある歌手なんだな、ということを感じた。
声に張りと輝きがあり、とくに高音がすばらしい。低音は時々不安定になるが、やはりテノールは高音勝負だから、
まあそれぐらいは許せる、と思うくらい高音がすばらしかった。
ただ、いわゆる「うまさ」はあまりないひとなので、調子のよしあしで差が出るのは当然だろうか。
今回も、ブラボーもすごかったがブーイングも一部出ていて、その気持ちも分かる気がした。

グレギーナも迫力満点。押し出しの強さと、女性らしい情感が同居しているのはやはりすごい才能だろう。
ただ彼女の弱点は、イタリア語が美しくないこと。もごもごという感じ、結果濁って聴こえてしまうのだ。
「なにを言っているかわからない」と、一緒にいたイタリア人が言っていたが、それもわかる。

2人に比較して、グエルフィはやはり「うまさ」では図抜けていた。
体調が悪かったようなので、慎重だったのは仕方なく、ややブレーキをかけながらというところだったけれど、
安定感は抜群で、安心して聴けるのはやはりうれしい。
ジェラールの善人的な面がより浮かびあがるのは、彼の性格から来るものだろうか。

その他歌手に関しては、とにかくソリストのレベルが脇役まで高く
(たとえばマッダレーナの母親役のチンツィア・デ・モーラ)、さすがスカラに次ぐ水準と言われていることを確認した。
指揮(カルロ・リッツイ)は無難なところだろうか。あまり推進力のようなものは感じられなかった。

このプロダクションの最大の売り物は、ジャンカルロ・デル・モナコの演出だと関係者から聞いていたのだが、
演出自体は流行の読み替えなどではなく、まっとうな路線。
舞台を前後に区切って(第2幕など)、出来事を同時進行形で見せたり、
第1幕フィナーレで、普通なら民衆がなだれこむところを、「ピエタ像に見立てた」裸体の親子を登場させるなどの工夫はあるけれど、
全体としてはしごくまっとう。
最後は、監獄の檻に見立てた格子を、主人公2人が昇天するようによじ登る
(スポーツマンのクーラはまだしも、グレギーナはちとしんどそうか?)。

デルモナコに終演後ちらと話を聞いたが、
「ドイツでやるんだったらロシア革命の時代にする」と言っていた。
彼はドイツでのキャリアの長い人(ボンの劇場総裁もつとめ、計35年滞在)。
「イタリア人は美しさを重視するが、ドイツ人は深いものを求める」のだそうだ。